2016年9月3日土曜日

カプースチンの協奏曲


2000年前後、日本で「発見」され世界に急速に広まったカプースチンの音楽。毎年少しずつ録音が出ていますが、どれも「8つの演奏会用練習曲」「ソナタ2番」などの自作自演のあるものばかりで、予算のかかる協奏曲の録音は少ない状態です。そこで、YouTubeに目を向けると幾つかの協奏曲録音が見つかるので、それをご紹介します。


Concerto for piano and orchestra no.2 op.14

March 5, 2016 in Princeton's Richardson Auditorium
Piano : Evan Chow
Conductor : Michael Pratt
Princeton University Orchestra

小編成のオーケストラにドラムセットがあるのが印象的です(カプースチンの協奏曲には頻繁にドラムセットが登場します)。ドラムは1フロアタムにハイハット・クラッシュ・ライドの通常よりも小さなセット。古き良きスイング時代を思わせる作風です。おそらくカプースチンがまだジャズオーケストラに所属していた時代の作品で、それがゆえにスイングジャズ寄りの作風なのでしょう(のちの作風にはいわゆる4ビートよりも8ビートが多用されます)。ジャズと伝統的なヴィルトゥオーゾ風パッセージの融合が絶妙です。

Concerto for piano and orchestra no.6 op.74

March 12, 2013, 東京紀尾井ホール
Piano : 川上昌裕
Conductor : 曾我大介
PFBオーケストラ

日本におけるカプースチンの第1人者、川上昌裕さんによるピアノコンチェルト6番の世界初演です。なんでもコンサートは3台のHDカメラによって撮影されていたそうですが、2台のカメラの映像が良くなく、そのためにこの録音はお蔵入りとなっていたそうで、なんとも残念です。作風としては2番と近いのですが、よりモダンジャズ寄りになっています。第1楽章のウォーキングベースとドラムをバックにピアノを弾きまくる場面は、モダンジャズ顔負けのかっこよさです。

Concerto for cello and string orchestra no.2

Cello : Christine Rauh
Conductor : Nicolas Collon
Deutsche Radio Philharmonie
こちらはドイツの女流による録音。楽器がチェロという典型的なクラシック楽器になると途端に雰囲気が変わるような気がしませんか? ストリンスグオーケストラによる伴奏、ドラムが入っていないということもあり、ジャズというよりは綺想曲的に響きます。サン=サーンスのピアノコンチェルト5番3楽章の冒頭を思い起こさせるというか。こちらはCDで録音が出ています。

Concerto for alto saxophone and orchestra

Saxophone : Alexey Volkov
Conductor : Mark Gorenstein
New Russia Orchestra

こちらはムーディな4ビートが入ったりと、よりスタンダードなジャズ寄りのアプローチが見られます。クラシック的に言えば、Rhapsodyといった曲調でしょうか? サックスのソロもバップ的に響き、クラシックを聴かないジャズファンにもビッグバンドジャズとして楽しめると思います。CDは現在品切れのようです。

Concerto for Eleven Instruments mov.1, Op.90

Conductor: 飯森範親
いずみシンフォニエッタ大阪

こちらは11人の奏者のための協奏曲の1楽章。フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、ピアノ、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバスという編成。ピアノは1楽章には参加していません(笑)。こちらは純クラシックと言っていいスタイルですね。なんとなくフランス風にも響く気がしませんか?



いかがでしたでしょうか。カプースチンはジャズに影響を受けながらも、自分はジャズマンではないと言い切ります。カプースチンにとってはジャズは変奏曲であり、即興よりも作曲の方がよりバラエティに富んだ楽曲展開ができると考えているようです。ジャズピアノを習った自分としては反論したい気持ちもあるのですが、こうしてカプースチンの協奏曲を聞くと、ジャズにはない曲想の大胆な変化が刺激的で大変面白く感じます。

カプースチンのソロピアノ曲は、私にはいわゆるモダンジャズよりはジャパニーズフュージョンを思い起こさせて、少なからずダサく聴こえる時もあるのですが(笑)、協奏曲はもっとカラフルで楽しく聴けました。カプースチンは6つのピアノコンチェルトの他にも様々な楽器のための協奏曲をたくさん書いています。今後、もっと録音が増えることを望みたいです。

なお、カプースチンに関する公式情報はこちら。作品リストもあります。
http://www.nikolai-kapustin.info/index.html
最新のコンサートや出版情報はこちら。
http://nikolai-kapustin.blogspot.jp/

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